吐き出す愛
視線の先には、たくさんの人の中心で笑う有川くん。彼を囲っている人の比率は、心なしか女子が多い気がする。
その姿にまた嫌悪よりも先に息苦しさを覚えて、自然と眉間にしわが寄った。
……ずるいよな、って思う。
有川くんのことを避けているつもりでも、行動一つ一つが目立つから、彼のことを何も知らずにいることは難しい。
たとえ顔を合わせなくても有川くんの行動は目に入ってきたし、人づてにいくつか話も聞いてしまう。
現に今だってすでに、彼の姿から目を離せないでいるぐらいだ。
直接関わっていなくても、有川くんは人を惹き付ける。その力にまんまと誘導されている自分が悲しい。
「ショック……だったのかな」
ぽつりと溢した疑問は小さすぎて、外の騒ぎ声に容易く消されてしまった。
有川くんは、以前より素行が悪くなった。
先生に反抗することが増えて、他校の生徒と派手に喧嘩をしたって話も聞いた。
それから、前にも増して女遊びが酷くなったみたい。
毎日色んな女子とデートをしているみたいで、1日だけ付き合ってすぐに別れるということを繰り返しているらしい。
有川くんがこんな風になった理由を優子は、私が彼の告白を断ったからだと言うのだけど……。
分からないし、信じられない。
有川くんが、ショックを受けているなんて。
だって、ショックなわけないよ。
私への気持ちも、所詮安っぽい気持ちだったのたから。
あんなの、自棄になってるわけじゃない。
私に本気だと言って信じてもらうような必要がなくなったから、おおっぴらに遊んでいるだけだよ。
だから、今の彼が本心からくる姿なんだ。
……そう思うくせに、最後にまともに見た有川くんの表情が頭から離れない。傷付いたみたいなあの顔が。