吐き出す愛
「……っていうかさ、本当に、あんたたち何があったの? 佳乃が智也を急に振ったなんて、未だに謎なんだけど」
優子にアルバムを手渡し、代わりに彼女に渡していた自分のものを受け取る。
一緒に問いかけまで渡されてしまうけど、私はそれに曖昧に微笑むことしか出来ない。
優子も困ったように笑う。
「やっぱり今でも、理由は話してくれないの?」
「……うん。ちょっと、言えそうにない。ごめんね」
そこまで言いきってしまえば、さすがに優子もそれ以上踏み込んでこようとはしなかった。
本気で線引きしたところには無理矢理入り込まない。それが優子の優しさだから今はとても助かっていたし、それに甘えさせてもらっていた。
……上手く話せる、そんな自信がなかったんだ。
有川くんが女子とキスしていたことも、それを見て定まった自分の気持ちも。
すべて突然起こって、あっという間に終わったことだから、正直自分の中で整理しきれていないのかもしれない。
それに有川くんも優子には振られたと一言伝えただけで、今までのように詳しいことは話していないみたいだったから、私も必要以上に話さない方がいいと思った。
理由も、やりとりも。
私たちだけが覚えていればそれでいい。
有川くんが最後に言った言葉も見せた表情も、その真意は謎のままだけど。
全部私が覚えておくべきことのような気がするから、記憶として焼き付けて、私の中だけに残しておく。
それでもう、十分だ。
「……それより、優子こそ良かったの?」
「ん? 何が?」
気まずくなりかけた空気を変えるために尋ねると、窓の外を見ていた優子はこっちを見て小首を傾げた。