吐き出す愛
「クラスの打ち上げだよ。有川くんが居るし、優子だけでも行ってくれば良かったのに……」
気まずいというか申し訳なく思えて、優子の表情を窺うと声が小さくなった。
私も優子も、このあとに行われるクラスでの打ち上げには行かないことにしていた。
何しろ打ち上げに行けば、避けている有川くんと長く一緒に居る羽目になるから。しかも行くメンバーのほとんどが有川くんのグループだったりしてタイプが違う人達だから、何だか行っても気まずくなりそうだし……。
でも、そう思っているのは私だけかもしれないって思ったの。
有川くんと幼馴染みの優子からしたら、打ち上げに行くのは何も気まずくないかもしれない。
そうすると行かないと言い張る私に付き合わせているのかもって、自惚れてしまうと同時に不安になるんだ。
優子の顔色を恐る恐る確かめると、意外なことに明るく笑い飛ばされた。
「何で佳乃が行かないのに、あたしだけで行くのよー。いくら智也が居たって、あたしは佳乃が居なきゃつまらないもん。だからいいの! それに打ち上げなら、2人でも十分出来るでしょ? 帰りにあたしたちだけで、パーッと打ち上げしようよ!」
「優子……、ありがとう」
安心して微笑むと、返事の代わりに柔らかく笑みを向けてくれた。
「あっ、そうだ。帰る前にちょっと、トイレに行ってくるね。佳乃も行く?」
「私はいいよ。荷物纏めて待ってるね。行ってらっしゃい」
「行ってきまーす」
ひらひらと手を振って、優子の背中を見送る。
その頃には同じように残っていた人も教室からすっかり去っていて、辺りには徐々に寂しい空気が漂い始めていた。
クラスメートとも、友達とも、先生とも。
お別れなんだなって、改めて感じさせてくるような雰囲気だった。