「涙流れる時に」
「ママ・・・」るみ子は酔いも回って意識は朦朧と、でもその女は、るみ子にこう切り出した。

「一緒になりたいの?その男と・・・」

「何よ・・・いきなり・・・・。」

「じゃあ、なんとかするよ。私が。」

「え・・・」るみ子は言葉を失った。

「ママ・・・」気がついたらママは奥へ引っ込んでしまって

店内にはるみ子と謎の女。

50万だった。女は50万でそれをするという。

「もう、なんだかわからない・・・」酔いも回っているせいか頭が回らない。

るみ子は返事をすべきか戸惑う。何かの詐欺をも疑った。

疑ったが・・・るみ子はその女にすがるような目で見つめた。

「良かったら連絡して。」そう言うと

女は名刺だけを渡して去って行った・・・。

ツーンと匂う高級そうな香水。るみ子はこの匂いと酒に一人酔いしれた。

夜明けも近い・・・るみ子は久々に朝まで飲んだ。店を後にしてふと、またあの女がよぎる。

「これって、夢なの?」・・・

50万?・・・それだけが頭を巡っていて

「どうしよう・・・」

翌日からもそのことばかり、本当に?何なの?あの人・・・自問自答する毎日は続いていた。

「牧村が好き・・・」でも・・・

本気で妻と別れるのか、別れさせてくれるのか?

るみ子は一時も早く牧村と一緒になりたい。

それだけは変わりなく、気持ちは溢れた。

「また会いたい・・・あの女に」

誰もいない、いつもの更衣室で、るみ子は電話をかけた。

「あのぅ・・・」

「あら。あなたは・・・」

電話の相手はあの謎の女。女の声は妙に色っぽかった。
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