さみしがりやのホットミルク
「それに、その顔の傷……まーた晴臣、ケンカしたんだろ。いくら鳳組の跡継ぎったって、名門高校に通ってる身でそれはマズイんじゃないですかね」

「世界に進出してる日比野製薬の次期社長さんこそ、女遊びはほどほどにすべきじゃないんですかね」

「オレのは若気のいたりだ」

「じゃあ俺だってそうだ」



相変わらずのくだらない応酬に、顔を見合わせてからふたりで思わず吹き出す。

俺が着替え終わったところで、ふと光がまた、口を開いた。



「……そういえば。ちゃんとかえサンには、挨拶してから出てきたんだよな?」

「………」



不意打ちで痛いところを突かれ、素直に黙りこんでしまう。

オイオイオイ、と、光は半眼になって俺を非難する。



「まさか晴臣……黙って、出てきたのか?」

「………」

「ちょ、待って……じゃあ、組のことは? 話してないんだよな?」

「……それは、話した」

「は、」



俺のその答えに、さっきまでの冷ややかぁな眼差しを怪訝なものに変えて、光は足を組み直した。
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