さみしがりやのホットミルク
「悪い、もう、迷惑かけねぇから。それじゃあ──」

「……ここに、いなよ」



え、と、無意識に言葉がもれた。

俺のシャツを掴む彼女の手に、力がこもって。

大きな瞳が、まっすぐに自分のことを見つめている。



「オミくん、行くとこないんでしょ? なら、ここにいなよ」

「な、に、言って……」

「えと、よ、予備のおふとんだってあるし! 部屋着も、……ちょっと小さいかもだけど、弟が置いてったのあるよ!」

「………」



待て待て待て。

何を言ってるんだこの女子大生は。


俺は困惑しきった顔で、目の前の彼女を見下ろす。



「あのさ、自分が今何言ってるか、わかってる?」

「わかってるよ! でも、だって、オミくん行くあてないんだったら、ここにいて欲しい」

「………」

「ここにいてよ、オミくん」



眉を下げ、なんだか必死ともいえる様子で、佳柄は俺の胸元にすがりつく。

俺は1度、ふーっと長く息を吐いて。

今度こそ、その細い手首を掴んだ。
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