さみしがりやのホットミルク
ギャーギャーと一通り騒いだ後、ふと光が、何か思い出したように俺を見た。



「あ、そーいや晴臣って、昨日友達んとこにでも泊まったんか? 今朝おまえの母親から、うちに電わげふっ!!」

「光、ちょっと来い」



しゃべっている最中の光の顔にいきなりラリアットを食らわせ、その勢いでずるずる佳柄から離れて行く。

驚いた様子の彼女に声が届かない位置で立ち止まると、光がゲホゲホ言いながら涙目で俺を睨んだ。



「クソ臣コノヤロー!! 一瞬星見えたじゃねぇかコノヤロー!!」

「光その電話、何訊かれた?」

「はっ?!」

「母さんからの電話。何の話だったんだよ」



思いがけなく真剣な俺の様子に気が削がれたのか、光が「別に、」とあごをさすりながら答える。



「晴臣、そっちに行ってないかって。来てないって答えたら、礼言ってすぐ切れたけど」

「……そう……」

「なに晴臣、昨日なんかあったんか?」



そういえばおまえ、また傷増えてるし。

言いながら呆れたようにこちらを見る光に、俺は何も答えず。

近場のベンチに座っていた女性とその赤ちゃんに話し掛けている佳柄をちらりと一瞥してから、再び光へと向き直った。



「光。佳柄には、何も言うなよ」

「は、なんも言うなって……なに、どれのこと?」



……選ぶほど、こいつの中には俺の人に言えない話があんのか。

だけどまあ、とりあえず。



「全部。……俺昨日、家出して。今は佳柄んち居させてもらってるから」

「は……はあああ?! なんだよそれ、どういうことだよ!」

「言葉通りってこと。じゃーな、このこと誰にも言うなよ」

「ちょっ、……晴臣!」
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