さみしがりやのホットミルク
「おま、健全な男子高校生がスマホ放置とは──……って、この女の子だれ? え、晴臣の彼女?」



言葉の途中、ようやく目の前できょとんとしている佳柄の存在に気付いたらしい光が、不躾に彼女を指さした。

俺はその右手を軽いチョップで叩き落とし、小さくため息をついてから、彼女に向き直る。



「あの。こいつ、日比野 光(ひびの ひかる)。俺の高校の同じクラスのやつ」

「……ひかるくん?」

「ちょ、晴臣おま、もっと熱い紹介しろよ。『俺の親友サ!』とか!」

「きもいまじやめて」

「棒読みとか余計傷つくわー」



そのうざい言葉はスルーし、今度は横目でその光に視線をやる。



「で、こっちは、坂下 佳柄。俺らより1個年上。彼女じゃない」

「え、晴臣年上彼女いたんか!!」

「おまえ俺の話聞いてる?」



そんな俺たちのやり取りを聞いて、気付けば目の前の佳柄はくすくすと笑っていた。

まあ、こんな応酬は、いつも学校なんかでやっていることだけど──彼女にこんなふうに笑われては、なんだか照れくさくなってくる。



「かえサン、かわいーすね! こんな不良男なんかほっといて、オレとデートしませんか!」

「……吊るすぞ光」

「ほらかえサン!! こいつ怖いでしょ?!」

「あはははは!」



あの、エリートでクソ真面目な奴や腹の中で何考えてんのかわかんない見掛け倒し優等生ばかりいるあの学校で。……唯一、本当の自分でいられる相手。

それがこの、一見ただのチャラ男、だけど成績は学年トップという、何ともちぐはぐな日比野 光という男だ。
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