さみしがりやのホットミルク
「はーい、ここがマイスイートホームでーす!」



心底どうでもいい紹介をしながら、その女は解錠したアパートのドアを押し開けた。

ちゃらら~んと、ご丁寧にアカペラのBGMまでつけてくる。

彼女に続いてよろよろと玄関へと足を踏み入れ、目の前に広がるのは、それなりに綺麗めな1Kの部屋。


……アパートの外観から、なんとなく予想はついたけど。この女、ひとり暮らしかよ……。



「あ、洗面所はそっちのドアね。タオルは洗濯機の上の棚にあるから……ていうか、むしろシャワー浴びちゃった方がいい感じ?」

「……顔だけ洗わせてもらえればいい」

「そ? ならどーぞ、ごゆっくり!」



明るい声を背中に、パタン、と洗面所のドアを閉める。

……信じらんねぇな……普通女のひとり暮らしの家に、見ず知らずの若い男上げるか?

あまつさえ、シャワー貸そうとするとか。

よっぽど純粋か、はたまたただの馬鹿なのか……。

まあ、その無防備さのおかげで、今まさに自分は助かっているわけだけど。
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