恋しくて、哀しくて
圭太くんの愛車で向かった先は、海。海水浴のシーズンでもないから、ただぼんやりと眺めるだけ。



砂浜に続く階段に腰を下ろし、持参したお弁当を広げた。



「いただきます」



おにぎりを頬張る、圭太くんの横顔がたまらなく愛しくて、箸が止まる。


「ん?どうしたん?食べへんの?」



私の視線に気付いた圭太くんが、不思議そうに見つめる。そして、隙だらけの私に、そっと口づけた。



「…ちょっと…」



迷惑そうに眉をひそめると、クククッと、小悪魔のように笑う。



「弁当も美味しいけれど美咲さんの唇も、美味しい」



「もう!オバサンをからかわないのっ!」



嬉しいやら、恥ずかしいやらで、むきになって、おにぎりを頬張った。



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