やばい、可愛すぎ。


自然と体に力が入ってしまう。


震える───どうしようもなく、震える。


でも、逃げちゃ、だめだ。


私はすっと手のひらを皐月くんの手のひらに、重ね合わせる。


「っっ、ぁ」


怖いっ、怖いッ……!

恐怖で体が固まって、怖くて。どうしようもなく、怖くて。


きゅっと、目をつむったそのとき。



「手元じゃなくて、俺の顔見な」



すっと、心の奥に入り込んでくるような優しくて不器用な声。


その声で私の震えがちょっとだけ収まった。

そして───すっと皐月くんの顔を見上げる。



「ほら、できたじゃん」




その顔は───意地悪にでもなく、ただ優しくにかっと笑っていて。




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