やばい、可愛すぎ。
どうしたら、良かったのだろう。
あのまま───思い出すこともなく、俺のことを知らないままでいる、母親の隣にずっといればよかったんだろうか。
それとも、俺が忘れれば……よかったのかな。
何もかも、全部忘れて───お母さんのように、すべてを水に流してしまえれば、良かったのに。
そうしたら、こんなに苦しくなってしまうこともなかったのに。
「……」
ぼーっととめどなく流れていく、雨を眺める。
もう寒いのか、熱いのか、苦しいのか、寂しいのかわからなくなってしまった。
まるで、空っぽになってしまったみたい。
冷たく冷え切った指を動かすのも億劫になる、自分の頬に降りかかる雨が服の中に滑り落ちていくのが不快で不快で、たまらなかった。
……帰らなきゃ。
心のどこかで、ポツリとつぶやく声が聞こえる。
……帰らなきゃ、きっと心配してる。