やばい、可愛すぎ。

私は、ゆっくり目を閉じて今までの出来事を、高梨くんの話していたことを思い出していた。


皐月くんのお母さん───御影八千代さんは、皐月くんが幼稚園に上がるころ、大きな病気で入院していたのだと。


おそらく、皐月くんは理解できなかったはず。


母親が起こっている状況も、そのとき大人たちが話している話の内容も。



そして、八千代さんは大きな手術を行ってみごと、成功した。



その代り大きな代償を払って。



それが───それが、皐月くんの記憶だった。


皐月くんのお母さんは、皐月くんのすべての記憶を失って、何もかも忘れて───忘れ去ってそれでも、帰ってきた。



しばらく、皐月くんたちは病院を通い詰めたという。


もしかしたら、記憶が戻るかもしれない。

もしかしたら、また元もお母さんに戻るかもしれない。


毎日、毎日欠かさず病院へ───



危険な負荷をかけてしまうかもしれないから、皐月くんが自らの子供であること、記憶を失っていることを話さないことを条件として。




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