やばい、可愛すぎ。


驚いたように、目を見開く表情も、

いじけたように、顔を赤らめる表情も、


最初にあった、あの氷のような表情からは想像できないほど、和らいだもので。



キンコンカンコーン、と鐘の音に俺たちの会話は途切れる。


そこで、あ、と俺は鞄を高梨に任せたままだったということを思い出した。

さすがに、何も言わずに勝手に走ってきたから、きっと

あいつでも怒ってるに違いないし。



「俺、もう帰るから」


「……」


白井は、ぁ、と口をもごもごさせながら、何か言いたげにしている。

が、その反応が可愛くて、もっと困らせてやりたくて、



「男が怖くて一人で帰れないなら、俺が一緒に帰ってやってもいいよ?」


なんて、意地悪なことを言ってしまう。



< 56 / 514 >

この作品をシェア

pagetop