ファインダーの向こう
「もーぅ、沙樹ちゃん、神山ルミと幼馴染だったんだって? 水臭いなぁ、そうと知ってればこのネタ撮りもっと早く沙樹ちゃんに回しておけばよかったよ」


 波多野はコーヒーを煽りながら声を立てて笑った。沙樹は波多野の言葉に、愛想笑いもできないほど放心していた。


「あ、あの……どうして私とルミの関係知ってるんですか?」


「んー、僕もねぇ……たまーに情報を金で買ったりしてるんだよ、そんな時に君の話がちょろっと出てきてね、あぁでも誤解しないでよ? 僕が知ってるのはただ沙樹ちゃんと神山ルミが幼馴染だったってことだけだから」


 波多野が弁明するように言う。けれど、沙樹は情報ありきのこの仕事だから仕方のないことだと、心のどこかで納得していた。


「きっと、神山ルミも油断しておいしい話しゃべってくれるかもしれないでしょ? このネタ、結構他の雑誌でも情報先越されちゃっててねぇ……うちとしても、ここでドカーンと一発とくダネ載せたいわけ」


「……はい」


「やってくれるよね? まぁ、この仕事は私情を挟んじゃ商売上がったりだから、ジャーナリスト魂を燃やして頑張って!」


 波多野は、英気を養うようにばしばしと沙樹の肩を叩いて笑った。


(私が……ルミのネタ撮り、それって、隠し撮りしろってことだよね!?)
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