ファインダーの向こう
「豚箱入になる前に、神山しか知らない情報を聞き出す」


 逢坂がそう言うと、森本と呼ばれた男が薄く唇を歪めて笑った。


「その執念深さも相変わらずなんですね……ガサ入れは任せてください、ヘタは打ちません、なんせ私たちはあなたに鍛え抜かれた精鋭ですから」


「頼もしいこと言ってくれるねぇ……森本刑事」


「ですが、ガサの最中は店外で待機していてください。万が一、逢坂さんの顔を知っている人間がいたらこちらも厄介ですので」


「言われなくてもわかってるっての」


 そう言いながら逢坂が煙草の灰を人差し指でトンと落とすと、森本が少し沈んだ声で言った。


「本当は……私は今でもあなたに戻って来て欲しいと―――」


「余計なおしゃべりは終いだ」


「そう、ですね……では、失礼します」


 ぴしゃりと言われ、森本は自ら発した言葉を後悔するようにそそくさとその場を後にした―――。
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