ニセモノ×初恋=??
―――我慢しろ。ここで怒鳴ったって、仕方ない。


殴りたい衝動を必死で押さえる。

ショックなのと、怒りで拳を握る手がふるえた。


「けどさー、たまには女慣れしてないイケメンに教え込むのも楽しそー」

「そーそー。樹、絶体女知らないって」

「まじー?たまんないね、それ」

「しかも各務沙菜とかいうやつに樹の初めての相手って嘘ついたら、ピンときてないわけ。それも腹立ってさー」

「てか、薫エグいわ、会話が」

「いーでしょ、日頃お嬢で良い子にしてんだからさー。疲れるのよ、あれ」


―――これが、本音だったんだろうか。


涙は出ない。

ショックと怒りで震える手を押さえるのに必死だった。



すると。



目の前の田神くんが、震える手をぎゅ、と握ってくれた。

ハッとして顔をあげると、テーブルの真向かいから手招きをされる。

身を乗り出して顔を近づけると、

「沙菜ちゃん、気付かれないようにここを出ようか。先に出てくれる?俺がどうにかするから」

と笑って言うと、自分が被っていた帽子を私に被せてくれた。


「んで、駅の銅像前で待ち合わせで」


田神くんの優しさに感謝して、コクン、と頷くと、不自然にならないように席を離れる。



田神くんは私が離れていくのを見て立ち上がったらしく、

「俺の名前が聞こえたけど、何か用?」

「え!?」

「あ、田神大翔だ!」

「ホンモノ!?うわ、まじかっこいい!」

「えーっ!!かっこいい!」


後方からそんな会話が聞こえた。



――凄い。田神くん、自分に注意がいくように、話しかけに言ったんだ……。


お陰で私の存在は全くバレずに済んだ。


田神くんの行動に感謝して。


ときどき、さっきの会話を思い出して。


気持ちはぐちゃぐちゃだった……。
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