雨の日は、先生と

つながりを求めて

新野君の寂しげな背中。
楓の刺すような視線。


私はこんなにも人を傷つけて、それでも―――



私は、天野先生が好きなんだ。
他の誰かではだめなんだ。
天野先生しかいないんだ。


天野先生が病気なら、それでもいい。
奥さんが看病していて、私はそばにいられなくても。



好きでいる権利をください、先生―――



心から追い出そうとすればするほど、すべてが先生に通じていく。
日常の些細なことから、先生を思い出してしまう。
その温もりや、柔らかな笑顔や、苦しげな表情も。


無理だよ、先生。
忘れてくださいなんて、そんなこと。



微かな記憶を頼りに、バスを乗り継いである場所を目指した。

先生のことを、ほんの少しでも知りたくて。

先生が抱えているものを、理解するための手がかりだけでも、この手に掴みたくて。
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