雨の日は、先生と
第13章 真心

数学科準備室

担任の話を聞き流していたら、かばんの中でケータイが光っているのが目に入った。

珍しい。

誰からだろう。



見付からないように、そっと机の下でメールを開く。

さすがに、卒業の日に怒鳴られたりはしないだろうけれど。




件名:なし

本文:

数学科準備室




たったそれだけだったのに。

私は、驚きに大声を上げそうになった。

恐る恐る送信者の欄を見る。




ようこ――――――




天野先生だ!




私は、何も持たずに教室を飛び出した。

担任が止める声が聞こえた気がしたけれど。

いても立ってもいられなくて。



先生に、会える。



そう確信する。



つい二週間前に会ったのに、まるでもう何年も会っていないかのような気がした。




この角を曲がれば準備室―――




私は、破れそうにドキドキする心臓を抱えて、その部屋に飛び込んだ。
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