雨の日は、先生と
外は寒かった。

急に吹いてきた冷たい風が、容赦なく私に吹き付ける。



もう、いいよ。



みんなが消えてほしいと願うなら、私は消える。

消えればきっと、みんな幸せになる。

私もきっと、その方が幸せなんだ。


お父さんもきっと、あの時こんな気持ちだったんだね。
あの頃の私は幼すぎて、ちっとも分かってなかったよ。

でもね、お父さん。

お父さんが亡くなって、幸せになった人なんて一人もいない。

一人もいないよ――





あてもなく彷徨い歩いているうちに、寒ささえ感じなくなる。

高架橋のてすり、線路の上、ビルの屋上、横断歩道、スクランブル交差点――

いろんなところで立ち止まってみる。

心を失ったみたいに、どこまでもどこまでも、真っ暗になるまで歩き続けた。





それなのに。





今、私はどうして、ここにいるんだろう。





何度考えても、どうやってここに戻ってきたのか分からない。
でも、私は今、確かにここにいる――




数学科準備室の前の廊下に。
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