殺し続ける
「お兄ちゃんも?お兄ちゃんも独りで遊ぶの好きなの?」
ひょいと後ろから姿を表したのは小学生くらいの少女だった。
俺は突然の少女の登場に体をビクッと強ばらせてしまった。
「あー!びっくりしてる」ケラケラと笑う少女
俺は深く息を吐いて、乱れた心音を整えようとする。
「お前…こんな時間に外にいて良いのかよ」
静かな空間に俺たちの声は響いている。
「良いの」
少女は少しうつむいた。その表情は陰になり、俺には見ることができない。
「ふーん?まぁ、どうでも良いけど。俺、関係ないし。でも、危ないからな最近は物騒だ。こんな時間に外にいたら怪しいオヤジに誘拐されちまう」
俺が言うと少女はキョトンとした顔をした。大きな目がさらに大きく開く。そして、徐々に細められていった。
「お兄ちゃんみたいな?」
少女は少し俺から離れた。
「…。そうだなぁ。俺なら、もっとナイズバディなネェチャンを誘拐してぇなぁ」
俺は遠くを見つめていった。そして、少女の顔をチラリと見てやった。
もちろん本心ではない。「サヤだって大きくなれば、ナイズバディなるもん!!」少女は怒り浸透の様子でドシドシと土を踏み固めた。そして俺の横に腰掛け、足をブラブラとさせている。
「はいはい」
俺は適当に返事をした。 今まで、誰も通らないし、人も来ないことが気に入って来ていたこの公園に、人が いるのは驚かされたが、正直言うと邪魔くさい。
「心配してくれてアリガトーお兄ちゃん」
別に心配してねぇけど…俺は声に出さなかった。
「お兄ちゃん。サヤもう帰るね」
少女はすくっと立ち上がった。
「家は近いのか?」
「気にしないで。」
俺の問いかけに、少女は急に冷めた声を出した。「あ…ああ。気をつけてな」
俺は、あんな小さなお子様に勢い負けてしまったのだった。
少女の背中を見送ってから、俺はしばらく目を閉じた。
冷たい風邪が心地よく、木々が揺れ、灯りに触れた虫がバチバチと鳴った。
俺はゆっくりと目を開け、慣れた暗闇の奥を見つめ、家へと帰る。
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