逃亡


「アンタ、准の友達?」

見目麗しい店長は、誰もいなくなると、訝しげに私を見下ろした。

「えっ、と…友達と言うかーー」

アンタ、って言った?

先ほどまで、笑みを浮かべていた口元は固く結ばれていて……これまでの経緯を屋嘉部さんが働く職場の店長さんなら、話しても構わないかも知れないけれど、あからさまな態度に言葉が上手く出ない。
「その……」
「准は、」
このまま仕事して貰うからと、店長は私の話を聞く気もないのか、出口へと強引に背中を押した。
「あの、」
屋嘉部さんに話を、と言っても聞いて貰えそうになかった。


「ちょっと店長っ!!真那をどうする気!?」
姿を消した屋嘉部さんが戻って来て店長を呼び止めた。

「准!!?お前、」
「ハヤトは良いって言った。」
屋嘉部さんは店長の言葉を切ると、私の腕を掴んだ。
「ーーー真那は、違うから。」
「……。」
屋嘉部さんは店の奥へと引っ張って行く。

「ごめんねー。店長、勘違いしてるだけだから。」

屋嘉部さんは申し訳なさそうに呟いた。
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