逃亡
「え!?准(じゅん)さん!!?」
ヘアサロンに屋嘉部さんが入ると、入り口の受付らしきスタッフの人に驚かれていた。
「准、何やってんだ?お前今日、休みだろ?」
真っ白いシャツにピッタリとしたパンツを履きこなす、見目麗しい男性が目に前に立った。
「んー、ちょっと分けありで。」
アハハと、頭を掻いた屋嘉部さん。
「ふーん、分け有りかーーー」
店長と呼ばれた彼は、ニヤリと笑うと、「丁度い、仕事していけ。」と回りのスタッフらしき人達に顎で合図した。
「エッ」
屋嘉部さんは両腕をガッチリ捕まれ引き摺られるように連れていかれる。
「て、店長!?私っ!!」
「あー、五月蝿い!!早く行け!!」
「もーっ!!店長の馬鹿!!ーーー真那、ちょっと待ってて、すぐ戻るから!!」
連れていかれる屋嘉部さんに、伸ばした手が、まるで引き裂かれた恋人みたいで、なんともお間抜けな姿の私。