逃亡
『ーーー俺が、結婚を決意したのは、これ以上誤解やすれ違いで、嫁を傷つけたくなかった。
生活が不規則で、真夜中に収録が終わることもざらで。
電話一本かけることも出来ない、こんな風に報道されても、言い訳すら出来ずに、ただ盲目に信じろと言うことしか出来ない。』
『……。』
パシャパシャと集れるフラッシュ。
『婚姻という法で縛れば、夜中でも堂々と嫁の待つ家に帰れるーーー会うために回りの人間を振り回す事もなくなるんです。』
ハヤトさんが、会見場の袖に立つ人に苦笑して見せた。
集れるフラッシュ。
「Hibikiのマネージャーだよ。」
准さんが声を潜めて教えてくれた。
『同棲しようとは、思わなかったんですか?』
『ーーー留守の間に出ていかれたら、終わりでしょう?そんな薄っぺらな関係、望まないです。』
『ハヤトさんは、意外と“束縛男子”だったんですねえ。』
『嫁、限定です。』
ニッコリ笑ったハヤトさんに、再び激しいフラッシュが集れる。
『木梨花梨さんとは、無関係だと言いきれますか?』
『はい。』
「ーーーとしか、言えないわな。」
理巧さんはポツリと呟いた。
「……。」
人の恋愛に無関心だった私には、彼の言葉の意味を図ることなど出来なかった。