セカンドデビュー【完】
人数は半分に減った。

「11番、あなたは帰らないのね」
「水原琴音と歌えるなんて、チャンスじゃないですか。ユニットをバラしてソロ、という選択肢もありますし」

水原アヤはファイルをめくって、ゆっくり指を滑らせた。

「レコード大賞新人賞、映画出演は6本、ドラマが6本……」
「そのうち主役は4本です」

さらりと読み上げられた輝かしいオレの経歴。
応募者たちが、いっせいにオレを見る。

……まあ、過去の栄光、といえなくもないけど。

「じゃあ歌ってみせてくれるかしら」
「はい」

オーディション用に練習してある、曲のCDをかけてもらう。
数年前に大ヒットした恋愛映画の主題歌だ。船が沈むやつ。
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