セカンドデビュー【完】
歌い終わると、他の応募者たちから拍手が沸き起こった。
オイオイ、ダメだろ、敵に拍手なんかしちゃ。
水原アヤは腕を組んだままだった。

「……今の、11番に勝てる人はいるかしら? 我こそは、と思う人は歌ってみて」

オレは、歌唱力は自信ある。練習してきたし。
バンドも組んでたし。
周りを見渡しても、誰も手をあげない。

「ちょっと、誰もいないの?」

いないなら、それはそれでいい。
オーディションは一回きりじゃないんだし、ここで落ちても他を受ければいいだけの話。
オレは何回もそうしてきたんだし。


「……誰も歌わないの? じゃあ、今日はここまでにしましょうか。自信がない子を採ったって仕方ないものね」

慌てて、数名が手を上げて、順番に歌うことになった。

オレの後に歌う勇気は認めるけど。
手を上げた全員が歌唱審査を終えると、結果はメールでお知らせします、と水原アヤは事務的に切り上げ、『さっさと帰れ』といわんばかりにドアを開けた。

「11番、あなたは残って」
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