セカンドデビュー【完】
「そういえば、バンドはもう辞めてしまったの?」
「ええ」
「もったいない」
「メンバーに迷惑はかけれません。それに、もう済んだことです」

3年前に母が死ぬ前に、レコード会社と契約する直前まで話が進んだことがある。
タイミングが悪く、その話は流れてしまった。
母が有名人だったのが災いした。
水死なんてイメージが悪い、と、その一言で。

わからなくも、ないけど。
その時のバンドは、自然消滅してしまった。メンバーとは連絡を取っていない。

「倖太くんがデビューしたら、美香もきっと喜ぶわね」
「……そう、ですね」

そう信じたい。
オレができる親孝行はなにか、ずっと考えている。


「連絡するかもしれないから、その時はスーツで来てね」
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