セカンドデビュー【完】
「松本さんは、あの日、母と一緒にいたはずです。父さんが話してましたから」と琴音。
「松本のアリバイは、なんて?」
「旅館にいたと言っている。場所は黙っているがな」
「心当たりがあります」

すぐに家を出て、鏡原と玉木を乗せた車を先導する。
以前、松本に連れ込まれた、奥多摩湖のさらに向こうの旅館だ。

写真を見せると、女将は松本のことを覚えていた。

「このお客様なら、確かに3年前にもいらっしゃいましたよ」
「本当ですか」
「ええ。チェックインの直後に急に仕事が入ったとかで、帰られたんです。間違いありません」
「間違いない、と言えるなにか理由があるんですか?」と玉木。
「その日の翌日、女優さんの死体が川から上がったでしょう。ワイドショーで葬式の様子を映していて、そのお客様が映っていたんですよ」
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