Holy-Kiss~我が愛しき真夜中の女神達へ~【吸血鬼伝説】
「それで、皆は。
 他の者達は、どうした」

 質問をすると、ジジイは目を伏せた。

「ついさっき、最後の攻撃に出かけて行きおった。
 万歳、の声がまだ耳についとるよ」

「……っ!」

 身を翻して出て行こうとした俺を、ジジイが杖で止めた。

「……そこを、どけ!」

「ダメじゃ。
 今からでは、間に合わんぞ?
 一人で行って、なんになる!!」

「昼間の戦いに出なかった奴らは。
 さっきまで、ここに残っていた者たちは、戦力にもならない負傷兵ばかりだ!
 まともな武器も、弾薬もない。
 敵に攻撃なんて、出来ないぞ?
 みすみす犬死させる訳には、行かないだろうが!
 連れ戻してくる!!!」

 俺が、ジジイの杖を押しのけようとすると。

 ジジイは、思いのほか、強い力で抵抗した。

「戦いにならないことは。
 出て行った者たちも、百も承知だ。
 奴らは自決をしに。
 ……自分の命を絶ちに出て行ったのだ」

「なん……だと!?」

 俺の叫びに。

 ジジイは、やけに淡々と喋りやがった。

「ここには、もうすぐ敵が来る。
 だから。
 ……生きて虜囚の辱めを受けるなかれ……だそうじゃ。
 要は、敵に捕まるのなら、死んだ方が、マシなんだそうじゃぞ?
 ……いまいましい」

 ジジイは、やりきれん、とばかりにクビを振った。
 
< 49 / 66 >

この作品をシェア

pagetop