スノードームと恋の魔法
「何でだろうね?僕も一瞬、声が出るようになったのかなって思ったんだ」
後日、再びお兄さんのアトリエを訪ねた。
その日はボク1人でだ。
お兄さんは子供の頃、ある日突然、声が出なくなったらしい。
精神的なものらしくて、声帯の異常とかではないらしいんだけど、それからずっと声が出せないんだって。
だから、ボクが初めてここを訪れた時、ボクと会話ができて驚いたらしい。
そういえば、お兄さんは僕の言ってることが解るなんてすごいって言ってた。
お兄さんはお爺さんと2人で暮らしているんだけど、ボクが帰った後、お爺さんと話してみようとしたら、やっぱり声は出なかったんだと悲しそうに呟いた。
何でボクらの間だけで会話が成立するのは謎だったけれど、ボクはお兄さんと話せて嬉しかったし、お兄さんもボクと話せて嬉しいと言ってくれたから、謎は謎のままでもよかった。
「そういえば」とお兄さんが何かを思い出したようにボクに訊ねる。
ボクらはストーブに当たりながら、お兄さんはコーヒーをボクはホットミルクを飲んでいた。
「君のお姉ちゃんが持っていた毛糸のバッグのことだけど・・・」
お姉ちゃんのお気に入りのポシェットのこと?
肩から掛けるタイプの小さなポシェット、真っ赤な毛糸で出来ていて、ワンポイントに小さなピンクのリボンが付いている。
「ボクのお母さんが子供の頃にお母さんのお母さん、ボクのお婆さんが作ってくれたんだって。お婆さんはもう死んじゃったんだけどね。お姉ちゃんはお母さんからそのポシェットを貰ったみたい」