スノードームと恋の魔法
しかし、彼の両親と祖母を含む、その時同じバスに乗り合わせていた、たくさんの旅行客が亡くなったのだ。
「事故を経験して以来、僕には死への恐怖と、未来への絶望みたいなものがずっと纏わりついていたんです」
それで、人と関わり合うことを恐れ、山奥の村でひっそりと生活していた。
「ここでの生活は、僕にとって心地よいものでした。祖父を始め、ここで出会った人々が少しづつ、僕を良い方向に導いてくれたのだと思います。初めての個展を開くことが決まった時に祖父がこう言ってくれたんです」
(お前が私の孫で、本当に誇らしい気分だ。お前の目の前には輝かしい未来が待っているはずだ。もっと自分に自信を持って邁進していきなさい)
輝かしい未来____きっと個展名の「未来への光」はお爺さんの言葉から取られたものなのだろう。
「僕はひどく内向的な子供で、お爺さんにとったら出来損ないの孫のような気がしていたんです。大好きなお婆さんの代わりに、あの時、僕が死んでいたら良かったのにとも思ったほどです。けれども、その一言で僕は救われた気がしました」
事故のトラウマからか、お爺さんは趣味だった旅行に行くことを辞めてしまった。
スノードームのコレクションも何年も同じ顔触れだ。
彼はそんなお爺さんのためにもスノードームを作ったのだという。
お爺さんとお婆さんが旅した世界をスノードームの中に閉じ込めた。
「the world trip」と名付けられた作品は、世界中の観光名所の前で微笑む老夫婦のシリーズだ。
細かい描写に幸せのたくさん詰まったスノードームは、彼の祖父母がモデルなのだ。
そして、彼の家族写真の前に飾られているスノードームにも、凱旋門の前で佇む老夫婦が再現されていた。