スノードームと恋の魔法
「個展を開いて、祖父の嬉しそうな顔が見れて良かったなと思ったんです。僕は祖父に迷惑を掛けてばかりでしたから。祖父の安らかな顔を見た時、悲しみと同時に、僕は亡くなった家族の分まで精一杯生きようと、強い思いが生まれたんですよ」
スノードームを作ることによって生まれた光なのだと、彼は話した。
「すみません、つい、つまらない話をしてしまいました」
彼は照れながら、「行きましょう、アトリエに案内します」と席を立った。
「話していただいてありがとうございます」と返事をし、玄関に向かう彼の背中を追った。
「両親と祖母を旅行先の事故で亡くしてるって?生き残りかぁ・・・子供の頃は登校拒否・・・ふむふむ、なかなか壮絶な人生を歩んでるんじゃないの?これをネタに読者の同情を引いたら、きっと彼、メディアに取り上げられて、瞬く間に時の人になるよ。いい逸材見つけて来たね、スギヤマちゃん」
出張前、事務所のディスク、ヘラヘラとしながら企画書に目を通す先輩を見て、溜息を吐いた。
「彼の過去について掘り下げるつもりはありません。あくまでも彼の作品で勝負するつもりです」
「解ってないなぁ、スギヤマちゃんは、結局、どんな才能があっても、スノードームなんてマイナー過ぎるんだから、読者は食いついてくれないよ。不幸な生い立ちで顔もイケメンだし、健気に頑張って作品に没頭している様子を感動作仕立てにレポートしたなら、絶対うけると思うんだけど?」
「私の企画書です。私の好きなようにやらせてもらいます」
ムッとした表情をあからさまに、先輩の手から企画書を取り上げるとまとめた資料と一緒にカバンの中に仕舞った。
先輩の言っていることは解る。
確かに、可哀想な人が一生懸命頑張っている姿には心が打たれる。