虹の架かる橋
マサとだんだん距離が離れていく。
私が疲れてペースダウンしているんだ…。


マサは後ろを振り返り、私の教材が入った鞄を左手で持ってくれながら、右手を差し出してくれた。


手を引いてあげるって意味だよね?


私はその手を握り、再び一緒に走り出した。


1人で走るより2人で走る方が頑張れる。


私の横を流れる繁華街の景色が、2倍のスピードに変わった。


この繋いだ手がこのまま離れなければいいのに…。


そう思ってしまうよ。


NZ行きの話も、あれは冗談だよ…。って笑ってくれればいいのに…。


お酒を飲んで走っているせいか、急に感情がコントロール出来なくなった。



哀しい気分に襲われ、走りながら涙が出てきた。


ホテルは、あの角を曲がれば着いてしまう。


この手を離さなければいけないんだ…。


ずっと握っていたいのに…。


マサは「今、何分?」と私に聞いてきた。


「まだ、門限まで7分ある。」
私が、やや鼻声になりながらも答えた。


その声にマサが振り返った…。



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