妖勾伝
ただ、思い出す記憶はそれだけで、やはり肝心な処は思い当たらない。

何故、
どうやってこの力を、手にしたのかを。




ーーーわちに、この力は必要なのか?

必要だったから、わちは手にしたのか?ーーー





何時も考える、自身との答え無き問い。







確かにアヤと旅を続けてきた二年間、この陰なる力で幾度となく窮地を抜けてはきた。

二人を取り巻く闇の存在は想像以上に大きく、

幼い頃から対峙する武術を躰に仕込まれてきたレンでさえ、生身の躰では闇相手にアヤを守りきることは出来なかったのだ。



しかし、結局この躰に宿る力も闇のもの。


そんな相対する想いに胸を悩ませながら、レンはアヤにも打ち明けられず旅を続ける。







それでもーーー





「今は力を使ってでも、
アヤを無事に都まで送り届けなければならないんだ……」



闇夜に溶けていく、レンの呟き。

取り留めなく、零れてゆく。




力を使う度に漆黒の闇に囚われ落ちていく感覚を、レンは怯えながら深く深くその躰に押し込める。



そうまでしてでも、アヤを守りたかったのだ。

この身が、闇に朽ち果てようともーーー





アヤに預けた生命。



『あてにくれぬか。
……その命。』



死に際の処刑場で必要とされた生命は、十五年前と変わらずアヤに預けたまま。

アヤがその掌を差し伸べてくれたからこそこうして生きているのだと、レンは切にそう感じていたのだった。










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