妖勾伝
信頼と敬愛に満ちた、アヤへ対するレンの感情。


しかし、レン自身もこの感情がこんなにも深くなるとは思ってもいなかった。



アヤの溢れる信条は、今まで培ってきた強さの証。

それは、旅を共にする時間が増えれば増える程、色濃く感じられていく。









アヤが産まれ落ちた、その家系ーーー


何千年もの以前から、

人知れず漆黒に染まる闇の間で蠢く者達と密に背中を合わせたまま、その血は引き継がれてきた。


ーーー闇を納めし者



末裔として先代の志しを引き継ぐアヤは、幼い頃から心情を表に出す事無く引き継がれる家系のしがらみに囚われたまま、その時を過ごしてきたのだ。


そして、
それもアヤの意志。

すべては、その志しを絶やさない為ーーー



レンと同じく、身を挺してでも守らなければならないものが、アヤにもあったのだった。









薄闇に、あの青白く静かにもゆるアヤの瞳の奥の炎を思い出す。


聡明な、蒼き眼差し。





始めてあった時から変わる事ないその瞳を思い、レンは背後に構える古屋敷を返り見た。

一人、アヤを屋敷に残してきたレン。



ーーー力の使えないこんな満ち月の夜だからこそ、本当はアヤの傍に居なければならないのに…







いつの間にか、止んでいた風。

周りをグルリと囲む木々の撓みの景色に、レンのむねが一瞬ドクンと高鳴る。




最初、此処に足を踏み入れた時の厭な感覚。


胸騒ぎをふと覚え、レンは腰を下ろしていた大岩から立ち上がった。


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