妖勾伝
呆れた神月の低い声が、少し距離を置いて立つレンの元に届く。
ガックリとうなだれる長身に、ふと滑稽さが滲み出た。
神月のそんなあからさまの態度に、レンは一歩後退りながら顔を訝しめる。
その口から出た言葉は呆れきった感情と微かな憂いが複雑に混じりあい、今までレンが見ていた神月の印象を、がらりと変えるものであったからだった。
「……レン、
貴様という奴はーーー」
神月はうなだれた頭を持ち上げレンに何か云おうとしたが、告げずにそのまま飲み込む。
深い溜め息が、息を潜める薄闇に溶けていった。
「ぬしとわちは、
以前何処かで会った事があるのか…?」
アヤの云うとおり神月の眼に闇の色は見えず、
ただ、レンの目の前には、神月という名の男が立っているだけ。
頭上高く広がる闇空に見えること無い満ち月の姿を仰ぎ、神月は失笑する。
「この右の眼を、使い物に出来ないようにしてくれたのはーーー
レン、
貴様だ……」
神月は歪に形を象る潰れた片眼にゆっくりと手を添えると、
その男前な顔立ちに静かに座する大きな口端を持ち上げ、ニタリとほくそ笑んだ。
ガックリとうなだれる長身に、ふと滑稽さが滲み出た。
神月のそんなあからさまの態度に、レンは一歩後退りながら顔を訝しめる。
その口から出た言葉は呆れきった感情と微かな憂いが複雑に混じりあい、今までレンが見ていた神月の印象を、がらりと変えるものであったからだった。
「……レン、
貴様という奴はーーー」
神月はうなだれた頭を持ち上げレンに何か云おうとしたが、告げずにそのまま飲み込む。
深い溜め息が、息を潜める薄闇に溶けていった。
「ぬしとわちは、
以前何処かで会った事があるのか…?」
アヤの云うとおり神月の眼に闇の色は見えず、
ただ、レンの目の前には、神月という名の男が立っているだけ。
頭上高く広がる闇空に見えること無い満ち月の姿を仰ぎ、神月は失笑する。
「この右の眼を、使い物に出来ないようにしてくれたのはーーー
レン、
貴様だ……」
神月は歪に形を象る潰れた片眼にゆっくりと手を添えると、
その男前な顔立ちに静かに座する大きな口端を持ち上げ、ニタリとほくそ笑んだ。