妖勾伝

｢ーーーしかし…｣






神月は苦虫をその口で噛み潰した様に、悦びで歪めた顔を一変させる。

ｸﾞﾗﾘと変わる表情に、レンは息を飲んだ。






｢あいつが……


あの糞坊主が自分の命と引き換えに、
この俺を冷たい念珠岩の中に封印したんだ。

一生其処から出れないように、律儀に印まで掛けてな。｣



闇雲に封印されてしまった自身を嘲笑うかの様に、神月は続ける。


｢五百年も……
五百年もの間だ。

冷たい念珠岩に封印されたこの俺が、貴様に想像出来るか？｣







冷たく凍てつく、念珠岩。

その中に、五百年も封印された神月。


神月の目の前にただ広がる闇は、闇以外の何者でもなく、

その暗闇で、もがき続ける神月の姿がレンの目に見えた気がした。









｢なら…

封印されたのなら、どうして出てこれたんだ？｣




生命をかけてでも封印された神月の闇の存在に、レンは躊躇いながら口を開く。

目の前に対峙する、大きな闇と向い合いながら。





本当は、

ーーーこうしている間に、先手を打つべきだ

自身の中の警鐘。



響きやまないその音を何故か押し留め、レンは神月に問いかけた。