平行線を歩こう、いつか繋がる日まで。
天使かと思ったら、既婚だし。
1年前、3年働いた福祉施設を辞めた。平たく言えば色恋沙汰トラブルだ。
福祉施設っていうところは割と社内恋愛に発展しやすいらしい。そんな意識は全くなかったんだが…なんだかめんどくさいことになり、上司に呼び出されたりなんなりして。もともと引きこもりの癖があるから辞めたら家から出れなくなった。でも母子家庭で、かーちゃんだけには迷惑も心配もかけたくないし。仕方なく、就活して夜勤専門のバイトを始めたわけだ、今の施設で。気楽だ。昼間はダラっとしたり、映画を見に行く。映画は大好きだ。人の何倍も、いろんな世界を見ている気分になる。後はどーしても、飲んじゃうんだけど。時間をどう過ごしていいのかわかんないんだ。友達とつるむのは好きじゃない。どSな性格が災いしてか友達もあんまりいないし。虐めてるつもりはないんだが、うまく関われない。ダメ過ぎ、俺。
仕事は真面目にやる。将来は自分で事業所を立ち上げたいんだ。お年寄りは好きだ。じいちゃんばあちゃんが好きだ、意外に思われるんだが癒やされる。そして人生の最後の時間まで幸せな人生だったって思ってもらいたい。こんなん誰にも言わないけどね、恥ずかしいから。見かけが俺、まぁイケメンつーの?硬派イケメンなつもりだし。自分で言うのもアレなんだけどスカウトされたりしたし。自覚してる。でもだからってもてるわけじゃないし、うまく付き合えない。人格がダメなんだろ。わかってる、いいんだ。だから夜勤のバイトが俺には合ってる。


そんな平和な生活に慣れてきたところに、現れたんだ。天使かと思ったんだが。そうじゃなかった。年齢詐欺の既婚者だった。でも。やっぱり天使なのかもしれない。



見た目は俺より若く見えたんだ。管理者の意地悪ババァにいびられてるのを見たのが最初だった。新人いびりは毎度のことだが、千尋は困りながらきちんと仕事をこなしてた。なかなかやるじゃん、新人!って思った。いつもニコニコしてる。でも人の顔を覚えんのが苦手なようで、はじめまして!って3回は言われた。ちょっとへこんだ。
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