夏休み
「おはようございます」
「おはよ」
「すみません、お待たせしてしまいましたか」
木陰に佇む雪美に直哉が急ぎ足で近付いた。
「大丈夫だよそれじゃ、少し歩こうか」
朝の九時を回ろうとする頃、太陽の陽射しが威力を増し始め、立っているだけで汗ばむ陽気の中、せみの鳴き声がまたその暑さを強調させる。空には大きな入道雲が浮かび、時折地上に影を落としてくれた。しかし、不思議な事に大気の温度を無視した、涼しい風は健在で吹いていた。
隣を歩く雪美は鍔の大きな麦藁帽子を被り、風が彼女の長く伸びた髪を揺らしていた。
雪美に魅取れながら歩くこと10分、崖に囲まれた、滝のある大きな川に着いた。
そこにはすでに直哉と同い年ぐらいの子供が三人遊んでいた。
「晴美〜」
雪美は大きな声を出して、川で遊ぶ子供の一人に声を掛けた。
「あっ!雪ねぇ〜〜!」一人の少女がこちらに手を振ってきた。
「行きましょ」
「えっ?」
直哉は雪美に着いて、川に近付いた。
「あっ、雪ねぇだ!」
「雪ねぇ〜!」
他の二人の少年も雪美に気がつき、こちらに手を振った。
川の辺に着くと、子供三人が雪美の後ろに着いて来た直哉をジロジロ見ていた。
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