黒猫屋敷

頬のとこまで縫い合わせると
あれほど長かった糸が短くなり

そのたびに糸を切り
結ぶの繰り返し。


ナツは飽きていた。


「つまんないーあっそうだ。
ちょっとそこの君きて。」


そういいながら
ナツが呼んだのは
両手で口を押さえながら
必死に声を殺していた
男らのうちの
一人だった。



彼らは
声がナツに聞こえたら
殺される


そういわれ
今まで惨い物をみても必死に
我慢していたのだ。


それなのに
誰も声はでていない。

それなのに
そのはずなのに

真ん中で座っていた
長髪で幼顔の男が

ナツに呼ばれた。



彼は何故?
そう必死に自分に
自問自答していた。

応答のない男に
向かってナツはもう一度
いう。

「来て。」

そう死を感じさせるほど
冷たく低い声で。


心では嫌だ!嫌だ!嫌だ嫌だ!
そう思いながらも

男は震える足取りで
ナツの方へと近寄る。





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