恋の扉を開けて
τ.想いはエンドレスのままで
僕はルリルのフォトアルバムを編集した。

タイトルは「ルナ・クレシェンテ」だ。

セピアにダークなカラーを載せた。

メイド・カフェ「ダブル・シルク」は店内がかなりシックだ。

メイドはキンキンな明るさも素っとん狂なポーズもなく、能天気な会話もしなければ、おふざけなメニューも出さなかった。

雅樹の店には大人の対応を提供できるメイド達がいた。

この世に疲れた男が求める架空の女だ。

それはちゃんとした接客を前提に、まともな聞き役でなければならない。

彼女達は媚びや一方的な売りは一切しなかった。

軽いキャラしかいない一般的なメイド・カフェとは全く異なる店だ。

カフェに何を求められるかを雅樹は理解していた。

それができるのは彼だけだと僕は思った。

アニメチックな癒しではなく、本物のカフェなら何を癒しとするのかをわかっている者でないと店を存続できない。ましてやメイドを立たせるとなると大いなる賭けだ。

高級ホテルのラウンジにいるロボットのようにかしこまったメイドや、ファミレスの多忙なウエイトレスではお話にならない。

あのエリアで生き抜くには他のカフェと違う空間を保たなければならない。

メイドの質を重視した雅樹の決断に間違いはなかった。

僕は僕なりにできる最大のものを今の彼に提供したかった。

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