恋の扉を開けて
「どこへ行ってたと思う?」

「ロシアと聞いたが!?」

「あれは単なる会話さ。」

「本当はどこへ行ってた?」

「おまえの好きな欧州だよ。」

「インドかロスかニューヨークかと思ったが?」

「それは単なる履歴だよ。」

「単なる履歴か!?」

またひとしきり笑った。

「見てもらいたいものがあるんだ。」

「あとでゆっくり見るよ。」

俺は店を閉めて秀作と出かけた。

神田の飲み屋街の方へ向かった。

裏通りにある隠れ家風な居酒屋に入り、俺たちは酒の席に落ち着いた。

「再会に。」

秀作とグラスを合わせた。

「今の店は本来のカフェに程遠い気がする。」

「資金のためだよ。」

彼は俺の唯一の理解者なのかもしれないと今になって思った。

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