はるこの遅咲☆妄想日記
「お待たせ」

私は川田が待つ喫茶店に入ると

川田は2杯目のコーヒーを飲み終え

さっさとお会計までやってきた。

「佐紀。行こうか。」

手荷物も最少なのか、川田のカバンは小ぶりでスッと肩にかけると

私の手をとった。

「まだここじゃイヤ」私は職場の近くを敬遠してか

川田の後ろを歩く。

東京駅まではなんとなく一緒に歩けなかったけど

いざ、新幹線のホームまで来たら

私もようやく旅行気分になってきた。

「本当に大丈夫?」

「ああ」

私たちは新幹線に乗り込むと

川田のコートの中で

やっと指を絡ませた。

時折、川田は耳元で囁く

「佐紀と旅行できるなんて嬉しいぞ。」

私はその一言だけでカラダがまた熱くなってしまう。

こうして旅行に行けるのも年に1回あるかないか・・・。

行先なんてどこでもいい。

既婚している者同士がこうして家族を欺いて

1泊共にするなんて。

「嬉しい・・・私も・・・」すっかり私は川田に身を預けていた。

もうすぐ熱海に着く。

不倫に熱海なんて・・・

いかにも・・・

でも、そんな訳ありなカップルは熱海の旅館には結構いるものね。

チェックインするときも

私は人目を気にしていた。

部屋に入るまでは油断できない。

川田はもちろん偽名を使う。

上は私の名前

下は自分の名前

彼らしくって好き。

私は海の見える部屋の窓辺で

その海風を感じていた。







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