満月~full moon~
彼女は、俺の言葉を信じていないのか、表情は一切変えない。
この状況で、嘘を吐く訳もないけど。
「今更、嘘なんて言わない。
あの美佳の事件は、志保の彼氏である大知が美佳に寝取られ、それを後悔して大知が自殺したことが始まりだと思われている」
「だから、お姉ちゃんが人の彼氏を寝取る訳がないっ」
ここにきて、初めて彼女の表情が変わった。
それほど、今でもそのことは認めたくないのだろう。
「君の言う通り。
大知が志保以外と寝たのは間違いない。だけど、それは美佳じゃないんだ」
「えっ……?どういうこと?」
戸惑いの表情になった。
今になって、真相を知らされるとは思っていなかったと思う。