君の存在

久瑠 紗妃

「ここは・・・だよ。」
え?聞こえないよ。もう一回言ってよ。

再び暗闇へと堕ちていた・・・。


【ppp…ppp…】

「…る。…で…。…デビル?」

ん…?

「デビル?平気?」

「は?何がだよ?」

「泣いてる…よ?」

ふと、顔に手をやると『涙』が落ちていた。
一瞬驚き、顔を洗いに部屋を出て行った。

「へい・・・」

「うるさい・・・。黙ってって。」

一瞬、カッとなったが自分で落ち着かせて、夢を思い返していた。
あの真っ暗なところ。
見覚えがある気がするけど、なぜか思い出せない。
思い出そうとすると、何かにぶつかっているような・・・。
そんな時、係の人が、近くに立っていた。

「なんだよ?」

「またあのオヤだ。」

「追い返せ」と言ったら施設長が出てきて「会え」とだけ言われた。
しぶしぶ会いに行くと

「今日も会いに来ちゃった。」

眩しいくらいの笑顔を向けてきた、久瑠紗妃。
この子の事もなぜだか、覚えている気がする。思い出せないけど。

「思い出して・・・」

「ないに決まってるでしょ。しつこいのよ。あなた。」

つい、強い口調で言っちゃった。謝ろうとしたら

「だよね・・・。だから、これ持って来たの。」

彼女の手から顔を出したのは、さびれたチェーンに付いているロケットだった。
受け取って、蓋を開けてみると、そこには

「私だ。」

そう、私の小さい頃の写真が入っていた。
もう、理解不能だ。

「あなたは何者なの?私の何を知っているの?」

「私は、貴女の・・・友達よ。」

は?友達?何言ってんだ、こいつ。

「私に友達なんていない。親がいないのと同じように・・・。」

不意に涙がこぼれた。そして、夢がフラッシュバックした。
ぼやけていた顔の一つがはっきり見えた。
久瑠紗妃の雰囲気と顔に似た女の子が立っていた。
混乱でしかなかった。
私は、その日、久瑠紗妃に会ってから、部屋から一歩も動かず、ずっとロケットの中の幸せそうな自分の見ていた。
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