小指も抱けない彼女
(三)
「聖っ!」
「はい!?」
ベッド上で肩を跳ねさせる彼女を見て、ホッとする。
胸をなで下ろしつつ、彼女に危害を加えるものを見下ろした。
常に清潔にしていたい。けれども、仕事がある限り毎日掃除が出来るわけもない。そんな万人が持つ悩みを解消する便利アイテムだと、こいつを買ったわけだが。
「ごめんね、聖。怖かっただろう」
「へ?」
小さな彼女の脅威となる奴は呑気に部屋のゴミを集めている。決められた時間に、部屋全体、ソファーの下にまで移動する凶器のスイッチを切った。
「俺としたことがうっかりしていたよ。すぐにこのルンバ、処分するから」
「……えぇ」
返しに困る彼女だった。
「処分って、もったいないよ」
「いや、これは聖にとっての凶器となり得る」
「いや確かに、吸い込まれたらバラバラでゴミと混ざっちゃうけど。ギュギュを捨てるのはイヤだなー」
想像したくもないことをさらりと言ってのける彼女は、食べかけのクッキーを置き、ベッド端まで移動する。
「あぶなーー」
「きゃー、怖いー」
と、落ちる気はさらさらない彼女は断崖絶壁に等しい場所から下がる。