小指も抱けない彼女
「飛び降りる気にもならない高さだし、頑張りやなギュギュもベッドまで上がって来ないよ。だから、大丈夫」
心配ないないと、手を振る彼女。
ゴミ袋に入れようと小脇に抱えたルンバーーもとい、『ギュギュ』を見る。
「捨てないでー、ご主人様ー」
「これ、ただの機械だよ……」
吹き替えする彼女は、どうも、このルンバを生き物扱いする。ギュギュという名前に関しても『ギュギュって、たまに“鳴く”』からとのこと。それは“鳴く”ではなく、稼働音が“鳴る”に過ぎないが。
「私からも捨てないでーって言いたいなー。ギュギュ見ていると和む」
「ゴミ吸っているだけなのに」
「障害物にぶつかろうともめげずに進むあたりが可愛い」
「……機械」
「夜鞠くんは、夢がないですなー」
彼女のことは何でも分かっているつもりだが、やはりこういった感性の違いは出るか。
「分かったよ。俺がいる時間に掃除するようセットすれば、それで事足りるだろうから」
ギュギュを下ろす。すかさず彼女の「ひゃほー、自由だぜー」の吹き替えが入った。