小指も抱けない彼女

「飛び降りる気にもならない高さだし、頑張りやなギュギュもベッドまで上がって来ないよ。だから、大丈夫」

心配ないないと、手を振る彼女。
ゴミ袋に入れようと小脇に抱えたルンバーーもとい、『ギュギュ』を見る。

「捨てないでー、ご主人様ー」

「これ、ただの機械だよ……」

吹き替えする彼女は、どうも、このルンバを生き物扱いする。ギュギュという名前に関しても『ギュギュって、たまに“鳴く”』からとのこと。それは“鳴く”ではなく、稼働音が“鳴る”に過ぎないが。

「私からも捨てないでーって言いたいなー。ギュギュ見ていると和む」

「ゴミ吸っているだけなのに」

「障害物にぶつかろうともめげずに進むあたりが可愛い」

「……機械」

「夜鞠くんは、夢がないですなー」

彼女のことは何でも分かっているつもりだが、やはりこういった感性の違いは出るか。

「分かったよ。俺がいる時間に掃除するようセットすれば、それで事足りるだろうから」

ギュギュを下ろす。すかさず彼女の「ひゃほー、自由だぜー」の吹き替えが入った。

< 15 / 47 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop