小指も抱けない彼女
(四)
急ぎ過ぎて、肝心の物を車に置きっぱなしにしてしまった。しかも、キーをつけたまま。
「まったくー、夜鞠くんはたまにおっちょこちょいだよねー」
ねー、とウサギの人形と戯れる彼女。身長は同じだが、横幅が倍ほど違う。
「何か、着れそうなものあるかな?」
「んー、この胸のフリルなんか、巻けばスカートに出来そうかな」
言われたので早速実践。スカートどころか、ワンピース変わりになる長さがあった。幼稚園のお遊戯みたいなフリフリに彼女は照れていた。
「ティンカーベルが、なんであんな際どいスカート履いていたのか、今なら分かる気がする」
「妖精以上に可愛く思えるけど」
「夜鞠くんがそう言うなら」
仕方ないか、と一着完成。
後は地道に縫うしかないか。
「うわ、ベッドだー」
金具のミニチュアに、待ち針を刺すピンクッションを置いただけのものに彼女は飛びつく。
「先に布団でも作っておくか」
「せっかくだけど、出来れば夜鞠くんのベッドで寝たいな。これは、たまに使うだけにしたい」
「聖のサイズなら、断然これが安全だと思うけど。気をつけてはいるけど、同じ場所で寝るとなると、聖をつぶしてしまわないか、気が気じゃないんだ」
「……」
「聖……」
「好きな人の匂いって落ち着くよね」
ミニチュアベッドから、俺の枕へ。
彼女の言いたいことを察し、胸が高鳴った。
俺のそばがいいんだ、と尻尾があれば、バタバタ振るほどの興奮を味わう。
「聖、そんなに俺の匂いがいいのかっ」
「な、なんか、肯定したら変態ちっくになるけど。うん、落ち着くから好き」
「分かったよ、聖!」
彼女の安全と願望を叶えるために枕の端を切断する。布と綿を微量取り、クッションを作成する。布団は、シーツでも使えばいいだろう。
「女子力高いよ、夜鞠くん」
「聖に楽させてあげたいから、家事は一通りマスターしたんだ」
プロ級でなくとも、基本が出来れば十分だ。