小指も抱けない彼女
ベッドの宮にミニチュアを並べ、そこに彼女を運ぶ。ここならば、彼女の様子が逐一把握出きるし、潰してしまう心配もない。
「気に入ってくれた?」
「夜鞠くんがやってくれたなら、何でもお気に入り」
作成したばかりのクッションに腰掛ける彼女。これで彼女のスペースは確保出来たわけだが。
「聖、まだ君に渡したい物があるんだ」
更なる安全を、彼女に与えたい。
紙袋の中から取り出した物を見て、さすがの彼女も目を見開く。
「え、スマホ?」
「俺と同じ機種だよ」
お揃いを別の言い方にして濁す。
幼稚な言葉に思えても、彼女と同じ物を持てる喜びは唇から隠しきれていない。
「嬉しいけど、私のケータイはまだ使えーー」
使えると言い切れない彼女は、先ほどのことを思い出したらしい。顔が曇っている。
「そっか、こんなんじゃ……。でも、夜鞠くん、私は」
「俺が仕事中の時、何かあったら連絡して。今、使い方説明するから」
俺の番号しか入っていないスマホ。
「ガラケーと違って、触るだけでいいんだ。少し移動することになるけど、ここの発信マークを押せば簡単に」
「夜鞠くん、私のケータイ……」
聞きたくない。
「ああ、画面上を歩くときは素足じゃない方がいいな。素足でもスマホは反応するから、靴下でも作っておくよ。知ってた?触れただけで画面操作出来る仕組みは、人間の微弱な電流を感じ取るからでさ。よくあるスマホ用の手袋なんか、指先に導電糸を縫い付けているから反応するようになってーー」
聞きたくない、聞きたくはない。
答えたくなんかないから、聞きたくないんだ。
だから、はぐらかす。
「君が使えるのは、これだけなんだよ」
捨ててしまえばいい。
捨てられない彼女の為に、みんな、俺がーー