小指も抱けない彼女
(五)
彼女が蝶のような可憐な小さきものになってからの一日が終わる。
「まずい、このままじゃ、ファミリーの一員になっちゃう!」
とかで、夕食を食べた後、俺が買ってきたウサギの人形に将来の自分を見据えた彼女は、ベッドの端から端を全力疾走する運動を始め、疲れたとそのまま寝てしまった。
寂しいと言えばそうだが、彼女の寝息と寝顔を見ては起こす気にもならない。
彼女に合わせ俺も就寝する。
明日は仕事。目覚ましのアラームをかけようと思ったが、小さな彼女の鼓膜に悪いのではとバイブのみにして、部屋の真ん中にある机に置いた。
朝の7時には家を出て、帰りは8時ほど。残業云々で尚更帰りも遅くなるわけだが、彼女は大丈夫だろうか。
ギュギュは俺がいる時にしか稼働しないように出来るし、虫も今の季節はいない。そも、彼女が出入りする部屋にハエ一匹の侵入を許したことはないが。
『何かあってからじゃ、遅いんだ』
完璧なる安全は、どれだけ探求したところでたどり着ける筈がない。世界にいるのが俺と彼女だけならば話は別だが。
「……」
明日、昼休みにでも抜け出して、カメラでも買って来るか。